ここ数年でよく耳にする「ラップ口座」ですが、どんなものか知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
日本投資顧問業協会の発表(注1)によると、ラップ口座の残高は、平成30年9月末時点で8兆7,450億円、件数が801,720件と、契約資産は順調に拡大しており、今後もますます増えていくと思われます。
投資家が高い関心をもつラップ口座とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
「ラップ口座」のラップとは包む(wrap)という意味からきており、金融機関に資産の運用や管理を一任するサービスをいいます。
以前のラップ口座は、最低金額が数千万円以上の高額なものしかなく、主に富裕層向けのサービスでしたが、ここ数年で最低金額が数百万円からできるファンドラップが主流となっており、退職金や相続資金などを元手に利用する人が増えているようです。
一言で運用と言っても、人によってリスクの許容度や運用方針は違います。ファンドラップでは運用を始める前に、どのような方針で資産配分をしていくかをあらかじめ設定をして、あとはその方針に沿って金融機関が運用や管理を行ってくれます。
たくさんの投資信託の中から、その投資家の好む投資スタンスに沿って組み合わせを考えてくれます。いわば、セミオーダーメイド型の運用スタイルといえるでしょう。 また、保有している間の運用成績は運用報告書で確認できますので、組み入れている資産がどうなっているのかをみることができます。
メリットは何と言っても運用の手間がかからず、分散投資ができることです。金融商品の知識がある方ならまだしも、特に投資初心者の方が一から資産の配分を考えようと思うと大変な労力がかかります。
ラップ口座ではそういった手間やその後の管理を一括して行ってくれるというのが最大のメリットです。運用で難しいといわれているリバランス(資産の再配分)も行ってもらえます。
また、自分でたくさんの投資信託を保有して適宜見直しをしていると、売買するたびに手数料がかかりますが、ラップ口座の場合は、その都度売買手数料を支払う必要はありません。 ではなにがデメリットなのでしょうか。 以前から問題視されているのが、コストが高いことです。
投資を一任している専用口座のため、ファンドラップ独自の手数料やさらに投資信託の信託報酬がかかります。これらの手数料は各金融機関によってばらつきはありますが、年間におおよそ2%~3%ほどの負担になります。
最近ではロボアドバイザーの普及により、より少ない元手でかつ低コストで資産配分を提案してもらえるサービスも利用できるようになりました。
ファンドラップは、コストの面だけみると割高に感じられるかもしれません。しかし、大手の金融機関で申込みすると、その後も担当者から相場環境の情報などを随時聞けるという利点もあります。
このようなことから、ファンドラップは自分で資産の組み合わせや管理の仕方を考えることのできる人にはあまりメリットを感じられないかもしれません。
どちらかというと、忙しくて運用のことを考える時間のない方や、どのように資産配分をしたらいいのかわからない方、そして資産運用を担当者と話し合いながら決めていきたい方には向いているサービスといえるでしょう。
自分に合った運用スタイルを見つけて、お金とうまく付き合っていけるといいですね。
(注1)日本投資顧問業協会 統計資料 契約資産状況(平成30年9月末)より
Text:小沼 鮎子(こぬま あゆこ)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
ファイナンシャルフィールド編集部