『毎月5000円で自動的にお金が増える方法』の著者で、個人資産10億円の元外資系ディーラー、ミアン・サミ氏は、自分が「マインドコントロールされている」と気づくことが大切だと説く。
たとえば「一戸建てを持ってこそ一人前」という常識は、本当に正しいのか? サミ氏にバッサリ斬ってもらった。
『金持ち父さん 貧乏父さん』シリーズの著者として知られる実業家のロバート・キヨサキ氏は、別の著書『改訂版 金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』(白根美保子訳 筑摩書房)のなかで、世の中の「働き方」を4つに区分しています。
このクワドラントを参照しつつ、私が独自に考える「働き方と資産形成」、そして「新しい奴隷システム」について、お伝えしていきます。
まず、4象限の左上は、会社から雇われている被雇用者、「employee(エンプロイー)」の人たち。
言わば、真面目にコツコツと働いてお金を貯める人たちですね。
次にその下、「self-employed(セルフエンプロイド)」。直訳すれば「自分で自分を雇用している人」という意味で、一般には自営業者や起業家をさします。
3つめは、ビジネスの場を提供する人である「business owner(ビジネスオーナー)」。
そして、4つめが「investor(インベスター)」、投資家ですね。
この4つの働き方のうち、図の左側の2つ、エンプロイーとセルフエンプロイドは、世界で一番大切なものである、自分の貴重な「人生の時間」を売って、お金を追いかけている人たちです。
特にサラリーマンは、「エンプロイーのなかで、少しでも上の役職に出世したい」とか、「将来は独立して社長になりたい」とか、4象限の左側だけでのステップアップを目指してしまい、なかなか、象限の右側に行くという発想がありません。
エラそうに言っていますが、私自身、今の会社では「雇われ社長」のような立場です。つまり、私がいなくなると、会社の機能がストップしてしまう。とても、ビジネスオーナーとは呼べません。
ただし、私は一方で不動産などの資産に投資するインベスターでもあるわけです。
私があなたにお勧めしたいのは、何も、今の会社を辞めろという話ではありません。単にお金の奴隷になっているだけでは、自由は手に入らないし、これからの時代、危険です。現在の私のように、少なくとも「インベスターの面も持ちましょう」と言っているのです。
なぜなら、税金を取られるだけでなく、給料の額が減り、お金の価値も下がる一方で支出も増え、コツコツと真面目にお金を貯めても、年間で見てみたら一向に貯金が増えない……と、そんな状態に陥ってしまうから。
このように、被雇用者「employee(エンプロイー)」や自営業者「self-employed(セルフエンプロイド)」に、自分で自分を押しとどめることを、私は「新しい奴隷システム」と呼んでいます。
このままでは、自分の時間を切り売りし、お金を追いかける構造からいつまでたっても抜け出すことができないのです。
これまでの人類の歴史をひも解くと、奴隷システムをうまく維持するには、2つの側面があることがわかります。
1つは肉体的な自由を奪うことです。逃げないように牢に入れたり、足かせをつけたりします。
そこで、肉体だけでなく、精神的にも奴隷化するのです。
「脳内奴隷化」ですね。
ひと言で言えば、「逃げてもいいことはないよ」と思い込ませる。
「外なんて怖い世界だよ」
「逃げても生きていけないよ」
「ここにいて、ご主人様のために、おとなしく働いていたほうが身のためだよ」
そう思い込ませて、潜在意識を奴隷化しておけば、奴隷は逃げません。
産業革命のとき。
定時に工場に来て、上司の言うことを聞いて、機械のように働く。
そういうふうに人間をトレーニングする必要がありました。
ですから、「まじめにコツコツ働くことが人として正しいあり方だよ」という教育をして洗脳をしたわけです。言わば、使う側にとって、都合のいい工場労働者を作るための洗脳教育。
この教育が、脈々と引き継がれてきたのです。
こうした「脳内奴隷化」は、もちろん日本でも行われてきました。
「会社を辞めてお金を稼ぐのはたいへんだよ」
「投資なんかしたら全財産を失うよ」
「人からお金を借りちゃダメだよ。借金して苦しみたいの?」
「リスクなんて取らないほうが身のためだよ」
「額に汗してコツコツ働き、身の丈にあった生活が一番だよ」
日本における「脳内奴隷化」の基本も、「今のシステムから離れないほうがいいよ」です。
昔の奴隷とたいして変わりはありませんね。
とくに日本人に多いのは、「一戸建てを持ってこそ一人前」という刷り込みです。
住宅を買わせるのは、高度成長期において、会社員を奴隷化するための国策だった、と言ってもいいくらいです。
戦後、地方から人を集めて工業化をしようとしたとき、東京で家を買いましょうっていう「持ち家政策」が、国によって国民に刷り込まれたのです。
こうした「洗脳による思い込み」はあなたの親の、そのまた親の代から引き継がれてきました。
私は、「良い悪い」を言っているのではありません。戦後の日本の経済、高度成長を支える上では、「持ち家政策」などの刷り込みは必要だったかもしれません。
戦後の奇跡の経済成長を実現させるためには、国民に真面目に働いてもらって、便利な家電を買いそろえ、家を持つことが幸せだと思ってもらう必要があった。
事実、その政策のとおり、一見、経済的にも豊かになって、「1億総中流家庭」なんて言われて、世界的に見れば豊かな暮らしぶりが実現できました。
俯瞰して見れば、持ち家などのローンによって国民を会社にしばりつけ、「源泉徴収」によって確実に税金を集める仕組みを維持するという、ゆるやかな「奴隷化」が進んできたのです。
このまま、「それなりの生活」が維持できればよかったのかもしれません。
しかし、今、経済成長が止まり、格差が広がりすぎた現状では、国民にコツコツと真面目に働いてもらっても、政府は「ましな奴隷生活」を与え続けることができなくなってしまいました。
おじいちゃん、おばあちゃん世代のように、「幸せな奴隷生活」は夢物語になってしまったのです。
そこで、政府は、今になって、今度は、アクティブラーニングを取り入れるとか、情報革命に合うような教育を進めようとしています。
しかし、その教育を受けた子が成長して、親になって、考え方を引き継いでいって……と考えると、こうした取り組みが定着するにはまだまだ長い時間が必要だと思います。
ミアン・サミ