<9月中間>スルガ銀行、追加損失も 再建と

著者:donghai    日付:2018.11.15

◇9月中間連結決算で最終赤字に転落

 スルガ銀行が2018年9月中間連結決算で巨額の貸し倒れ引当金を積み増し、最終(当期)赤字に転落した。不正のあったシェアハウス関連融資などを早期に損失処理し、投資家の不信を沈静化するのが狙いだ。だが、今後の調査次第ではさらなる損失拡大も予想されるほか、投資用不動産融資に代わる主力事業も見当たらない。経営再建と信頼回復の見通しは暗いままだ。

「(損失処理を)かなり保守的に行った。来期以降に安定した貸し出し収益が上がってくれば、決算は好転する」。静岡県沼津市で開いた決算発表会見で、有国三知男社長はこう強調した。シェアハウス関連の融資残高2030億円に対し、シェアハウスのほか投資用不動産融資などを含み1860億円(18年9月末までの累計)を引き当てた。

スルガ銀の経営を巡っては、不正の舞台となったシェアハウス向け融資に加え、全融資の6割近く(約1.7兆円)を占める投資用不動産融資の一部でも不正が発覚したことから、損失拡大懸念が強まっていた。経営不安から、一部では預金流出の動きも起きていた。

このため今回の決算では、初めてシェアハウスを含む個人向け融資と延滞率の内訳を開示。シェアハウス向け融資の延滞率が3割に達するのに対し、投資用不動産ローンの延滞率が0.5%に満たないことを示し、シェアハウス向けについてはほぼ損失処理を終えたことで「貸し倒れ引当金のさらなる大規模な増額は生じない」(有国社長)と強調してみせた。

だが、これでただちに信用不安が解消するとの見方は少ない。投資用不動産ローンを巡る不正は現在全件調査中で、シェアハウス同様、本来の借り入れ能力をはるかに超える融資や、不良物件への貸し出しが横行していた場合、損失が膨らむ可能性は残るためだ。一連の問題を受け地銀各行は投資用不動産融資を圧縮し始めており、不動産市況が悪化に転じれば延滞率は上昇しかねない。

財務の悪化に加え、収益力の低下も深刻だ。投資用不動産融資は同行が注力してきた収益の柱だったが、不正問題で金融庁による業務停止命令を受けており、来年4月13日の再開後も従来のように頼ることは難しい。同行幹部は「代わりになるだけの事業の構築には時間がかかる。それまで銀行の体力が持つのか」と不安を隠さない。

顧客や市場の信頼は地に落ちている。9月末までの半年間で預金は約6700億円減少。年明けのピーク時に2569円だった株価は500円台まで落ち込んでいる。スルガ銀は12日、岡野光喜前会長ら不正当時の経営陣に損害賠償を求めて提訴し、責任追及を本格化させたものの、シェアハウス所有者の代理人弁護団は「金額が少なすぎる」として、有国社長に対し株主代表訴訟を起こす構えだ。銀行界では「生き残るためには他行との統合が不可避」(首都圏の地銀幹部)との見方は強く、複数の有力地銀が候補として取りざたされている。【鳴海崇、竹下理子】