日本株、平成後は飛躍の10年 改革結実(窪田真

著者:donghai    日付:2019.01.16

2018年は米中貿易戦争を巡り波乱の相場展開でした。平成時代もあと半年で終わろうとしています。年末ということもあり、今回は平成の30年を振り返り、次の10年を展望します。

平成元年(1989年)は日経平均株価が史上最高値(3万8915円)をつけた年です。そこから、バブル崩壊が始まりました。平成時代の最初の10年は日本経済はバブル崩壊と金融危機に苦しみ、「失われた10年」と呼ばれました。

■「失われた20年」の後、構造改革が進んだ

次の10年(平成11年から20年)ではIT(情報技術)バブル崩壊・構造改革ブームを経て、一時日本が華々しく復活したと考えられました。ただし、それは甘い期待でした。

リーマン・ショックが起こると、再び日本経済は危機に陥りました。そのころから、少子高齢化が一段と進み、内需産業が疲弊してきました。さらに、エレクトロニクス産業で力をつけたアジア企業に日本企業が追い詰められるようになりました。危機は終わっていなかったのです。

そして、平成元年から20年までまとめて「失われた20年」と呼ばれるようになりました。

最後の10年(平成21年から30年)は復活の10年です。失われた20年で行った構造改革の成果を刈り取りつつ、さらなる構造改革が進みました。

私には25年の日本株ファンドマネジャーの経験があります。もっと若ければ、今から25年日本株のファンドマネジャーをやりたいとの思いを強くしています。割安で投資魅力が高いと考える銘柄がたくさんあるからです。

■日本株の投資魅力を高めた10の構造改革

平成の30年間で実施した10の構造改革が日本株の投資魅力を格段に高めたと考えています。

第1ステージの1998~2005年の構造改革ではまず、(1)輸出企業の海外への生産移行が進みました。平成に入ってから円高が一段と進み、1995年には一時、1ドル=80円近くに達しました。日本の輸出企業は米国やアジアなど海外生産を拡大し、円高に耐えられる体質に変わりました。

次に、(2)金融危機の克服です。日本の金融機関はバブルで膨らんだ不良債権を、10年以上かけて処理しました。

そして、(3)業界再編です。この時期は「大合併時代」として歴史に記録されることでしょう。戦前からのライバル企業が連日のように合併・経営統合を進めました。13あった都市銀行は3メガ銀行に集約されました。また、化学、鉄鋼、石油精製、セメント、紙パルプ、医薬品、小売業などでも生き残りを懸けた合併・リストラが進みました。

(4)財務体質の改善も進みました。平成が始まったとき、日本企業は全般的に借金過多でした。バブル期に「いけいけどんどん」で膨らませた借金が残っていました。失われた20年の間、日本企業は借金返済にまい進しました。

その結果、財務が大幅に改善し、実質無借金の企業が増えました。そのおかげで、配当金や自社株買いなど株主への利益配分が安定的に増えるようになりました。

(5)省エネ・環境技術もさらに進化しました。日本は70年代以降、省エネ・環境技術で世界をリードしてきましたが、2000年代に入り、資源価格が高騰する中で、さらに技術優位を広げました。

第2ステージの06~18年の構造改革では(6)内需産業の海外進出が加速しました。少子化が一段と進む中、内需産業(小売り、食品、サービス、化粧品、金融、陸運など)が続々と海外市場に参入しました。特に、アジアでの事業拡大が目立ちます。

当初、収益性が低かった海外事業の収益性が高まり、内需産業で最高益を更新する企業が増えました。

(7)IT化・サービス化への対応も進みました。20世紀はモノの豊かさを目指して人類が努力した時代ですが、21世紀に入ると高度に発達した大量生産技術により、製造業では利益を上げにくい時代となりました。

■IT化で良質なサービスを安価に大量提供

代わって不足が深刻になったのが「良質のサービス」です。21世紀は、医療、介護、保育、警備、料理、接客、教育、コンサルティング、エンターテインメントといった分野で良質なサービスを安価に大量提供できる仕組みをつくった企業が成長企業となりました。その代表がITを駆使する企業です。

日本は当初、この分野で出遅れていましたが、近年になりようやく、IT化で成長する企業が増えています。製造業でもサービス化・IT化に対応した「脱製造業」のビジネスモデルが広がりつつあります。

(8)海外での巨額のM&A(合併・買収)も増えています。日本企業が大型M&Aで次々と海外企業を買収する時代となりました。

(9)働き方改革も進んでいます。まだ道半ばですが、労働生産性を高める取り組みが本格化しています。少子化で働き手が不足する問題に対応し、女性の活用も進んでいます。結婚して退職した女性の再雇用や共働きで家事、育児、介護を分担する時代に対応した人事制度が普及しつつあります。

(10)ガバナンス(企業統治)改革への取り組みも挙げられます。これも道半ばですが、改革は着実に進みつつあります。近年、重大な不祥事を起こし、株価が急落する企業が増えています。内部通報制度の普及で、日本企業が過去何十年にもわたって隠してきた問題が露見するようになりました。ガバナンスを根本から改革するプロセスが進行中だからといえます。

■世界景気減速が予測される来年前半は要警戒

来年5月、平成に代わる「新元号」が始まります。次の10年、日本株はどうなるでしょう。これまで述べてきたように日本企業は10の構造改革をなし遂げており、それが投資家に評価されて私は日本株が大きく飛躍する10年になると考えています。

ただし、日本株をどんどん買うのは少し待った方がいいと思います。前回も説明しましたが、19年にかけて世界景気は減速が予想されるからです。19年の世界景気が停滞で済むのか、後退もあるのか見極めが必要でしょう。景気後退まであり得るならば、日経平均は2万円割れの可能性があります。

私は今後10年に明るい見通しを持っていますが、19年の前半までは警戒的なスタンスで臨むべきだと考えています。

 
窪田真之
楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。